福田龍世が演じる鍋丸とは誰か|『豊臣兄弟!』第42回で秀長の養子になった少年 ─ 直が救った命の子、実在する?史実の秀長の養子・仙丸(藤堂高吉)と秀保

大和郡山城の追手向櫓と多聞櫓
この記事のポイント
  • 鍋丸は『豊臣兄弟!』第42回「北野大茶湯」で登場し、秀長と慶の養子となった少年です
  • 北野大茶湯の会場で物陰にいたところを、秀吉を狙った賊の仲間と疑われて捕まりますが、かつて直が救った娘の子だとわかります
  • 鍋丸という名の秀長の養子は史料には見当たらず、ドラマオリジナルの人物と考えられます
  • 史実の秀長には、丹羽長秀の三男・仙丸(のちの藤堂高吉)という養子がいて、のちに甥の秀保が跡継ぎとなると、仙丸は藤堂高虎の養子に出されました

『豊臣兄弟!』第42回「北野大茶湯」で、秀長と慶の養子になった少年・鍋丸。演じているのは子役の福田龍世さんです。北野大茶湯の騒ぎの中で現れたこの少年は、いったい誰なのでしょうか。史実の秀長にこういう養子はいたのでしょうか。

この記事では、ドラマで描かれた鍋丸の素性と養子になるまでの流れを整理したうえで、史実の秀長の子どもと養子たち、とくに鍋丸と重なるところのある養子・仙丸(のちの藤堂高吉)について見ていきます。

▷ 大河ドラマではどう描かれたか
第42回「北野大茶湯」(11月1日放送)の茶会の最中、秀吉を狙った賊を石田三成が斬ったあと、物陰に隠れていた少年が捕まりました。それが鍋丸です。秀次は賊の仲間と疑って強くあたりますが、ともの夫・吉房(三好吉房)がかばい、鍋丸は賊とは関係ないとわかります。じつは吉房は、尾張中村の旧友・源太とひそかに連絡を取り合っていて、鍋丸を茶会に招いたのも吉房でした。秀長さえ知らなかったつながりです。秀長は「それを言ってくれれば」とこぼしますが、吉房たちは、秀長がいつまでも直のことを心に留めているのを知っていて、あえて黙っていたようです。さらに、鍋丸の母はかつて直が救った娘で、その母が坂井殿(直の父・坂井喜左衛門)のもとに引き取られて鍋丸が生まれたこと、坂井殿はすでに亡くなり、身寄りのない鍋丸が秀長を頼ってきたことが明かされました。秀長は城で奉公させようとしますが、慶は「むしろ養子にしよう」と言い、直が救った命がめぐりめぐって帰ってきた、それを大切にしよう、と二人は鍋丸を養子に迎えます。秀次は「血のつながらぬ、わけも分からぬ者を」と反対しますが、秀吉が養子を認めました。鍋丸は干し柿が大好物という少年として描かれています。
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鍋丸とは誰か ─ 直が救った命の子

ドラマの鍋丸は、秀長(小一郎)の中村時代からの幼なじみ・直とつながる少年として描かれました。直は尾張中村の土豪の娘で、小一郎をひそかに慕っていた人物です(直(なお)とは)。周りの人びとが秀長に鍋丸のことを言い出せなかったのも、秀長にとって直がそれだけ特別な存在だったからでしょう。直が昔救った娘が鍋丸の母で、その母は直の父・坂井喜左衛門(坂井殿)のもとに引き取られ、鍋丸が生まれます。喜左衛門はすでに亡くなっていて、身寄りのない鍋丸は、母を救った直の縁をたよって秀長のもとへやって来たのです。

茶会の場で賊の仲間と疑われたのは、ちょうど伴天連追放令が出たあとで、会場で刃傷沙汰が起きた直後だったからです。疑いが晴れると、鍋丸は秀吉から茶を振る舞われました。身分を問わず招くという北野大茶湯の趣旨を、ひとりの少年で見せる場面でもありました。

劇中で語られた「さかいどの」は、直の父で尾張中村の土豪・坂井喜左衛門(大倉孝二さん)のことと考えられます。娘の直が命と引きかえに救った少女を、父の喜左衛門が引き取って育てたという流れです。直については白石聖が演じる直(なお)とはでくわしく解説しています。

城の屋敷の縁側で庭を見つめる秀長の妻・慶のイメージ(イラスト)
城の屋敷の縁側で庭を見つめる秀長の妻・慶のイメージ(イラスト)

なぜ奉公ではなく養子だったのか

はじめ秀長は、鍋丸を城で奉公させたいと慶に相談しました。家臣として召し抱えるという、ごく自然な考え方です。ところが慶の答えは「むしろ養子にしよう」でした。直が救った命がめぐりめぐって帰ってきた、それを大切にしよう、という思いからです。

この場面は、慶という人物の描き方としても印象的です。秀長の幼なじみだった直の縁を、妻の慶が自分から受けとめ、家族として迎え入れる。ドラマの慶は、秀長を支える芯の強い妻として描かれてきましたが、その懐の深さがよく表れた場面でした。史実の慶(慈雲院)については慶(ちか)とはで紹介しています。

一方、秀次が「血のつながらぬ、わけも分からぬ者を」と反対したのは、豊臣一門の跡継ぎの問題がからむからです。秀次自身、秀吉の甥として豊臣家の後継の位置にいる人物で、一門に血のつながらない者が入ることに神経をとがらせていました。秀次と秀長の対立は秀次は秀長を嫌っていたのかでも取り上げています。

鍋丸は実在したのか

鍋丸という名の秀長の養子は、確かな史料には見当たりません。ドラマのために生み出されたオリジナルの人物と考えられます。ただ、史実の秀長にも、跡継ぎをめぐって何人かの子どもや養子がいました。

名前 秀長との関係 その後
小一郎(実子) ただひとりの実子の男子とされる 早くに亡くなったと伝わる
きく(実子) 娘。秀吉の養女となる 毛利輝元の養子・毛利秀元に嫁ぐ
娘(実子) 娘 秀長の養子となった秀保の妻となる
仙丸(養子) 丹羽長秀の三男。天正10年(1582)秋ごろ秀長の養子に 秀保が跡継ぎとなったため、藤堂高虎の養子となり藤堂高吉と名乗る
秀保(養子) 秀次の弟。ともの三男 秀長の死後に大和郡山100万石を継ぐが、文禄4年(1595)に17歳で亡くなり、秀長の家は絶える

鍋丸と重なる養子・仙丸(藤堂高吉)

なかでも鍋丸と重なるところがあるのが、仙丸です。仙丸は天正7年(1579)に、信長の重臣・丹羽長秀の三男として生まれました。本能寺の変のあと、秀吉は丹羽長秀を味方につけるために、男子のいなかった弟の秀長の養子に仙丸を迎えたとされます。

ところが豊臣政権が固まっていくと、秀吉は秀長の跡継ぎを豊臣一族から選ぶことにし、天正16年(1588)ごろ、甥の秀保を秀長の養子にしました。行き場を失った仙丸を引き取ったのが、秀長の重臣・藤堂高虎です。当時まだ子のなかった高虎は仙丸を養子にして一万石を加増され、仙丸は藤堂高吉と名乗りました。のちに高虎に実子が生まれたため、高吉は藤堂家の家臣として生き、伊賀の名張に屋敷を構えた名張藤堂家の祖となって、93歳まで長生きしています。

血のつながらない子を秀長が養子にしたこと、そして一門の血筋を重んじる考えによって跡継ぎの座から外れていったこと。ドラマで秀次が鍋丸に反対した理由は、史実の仙丸がたどった道とよく似ています。鍋丸がこの先どうなるのか、仙丸と同じ道をたどるのかどうかは、ドラマの見どころのひとつになりそうです(筆者の予想は鍋丸はこのあとどうなる?で)。

秀長が城主となった大和郡山城の追手向櫓と多聞櫓(奈良県大和郡山市)
秀長が城主となった大和郡山城の追手向櫓と多聞櫓(奈良県大和郡山市)

秀長の家はどうなったのか

秀長は天正19年(1591)1月、大和郡山城で52歳で亡くなりました。跡を継いだのは養子の秀保で、大和・紀伊・和泉の100万石ともいわれる領地を受け継ぎましたが、文禄4年(1595)4月、わずか17歳で亡くなります。秀保に子はなく、秀長が築いた大和豊臣家はここで途絶えました。くわしくは豊臣秀長の子孫・家系はどうなったのかで解説しています。

秀保の母で秀長の姉のともは、秀次・秀勝・秀保という3人の息子をすべて失うことになります(とも(日秀尼)とは)。ドラマで鍋丸をかばったともの夫・吉房も、秀次事件に連座して流罪となります。今夜、鍋丸をめぐって集まった豊臣の家族たちの行く末を知っていると、鍋丸を迎えた秀長と慶の笑顔が、いっそう切なく見えてきます。

▶ 第42回のあらすじと史実全体は豊臣兄弟!第42回「北野大茶湯」あらすじ予想と史実でまとめています。

▶ 上川周作さんが演じる、ともの夫で秀次の父・弥助については三好吉房(弥助)とはで、その生涯と秀次事件後の配流まで解説しています。

よくある質問

Q. 『豊臣兄弟!』で鍋丸を演じているのは誰ですか?
A. 子役の福田龍世(ふくだ・りゅうせい)さんです。

Q. 『豊臣兄弟!』の鍋丸とは誰ですか?
A. 第42回で秀長と慶の養子になった少年です。かつて直が救った娘の子という設定で、身寄りをなくして秀長を頼ってきました。

Q. 鍋丸は実在した人物ですか?
A. 鍋丸という名の秀長の養子は確かな史料には見当たらず、ドラマオリジナルの人物と考えられます。

Q. 史実の秀長に養子はいましたか?
A. 丹羽長秀の三男・仙丸(のちの藤堂高吉)と、甥の秀保が秀長の養子になりました。跡を継いだのは秀保です。

Q. 秀長の家はその後どうなりましたか?
A. 秀長の死後に跡を継いだ秀保が文禄4年(1595)に17歳で亡くなり、大和豊臣家は途絶えました。

まとめ

鍋丸は、北野大茶湯の騒ぎの中で賊の仲間と疑われたものの、かつて直が救った娘の子とわかり、秀長と慶の養子になった少年で、ドラマオリジナルの人物と考えられます。史実の秀長にも、丹羽長秀の三男・仙丸という血のつながらない養子がいましたが、一門から跡継ぎを選ぶ流れの中で藤堂高虎の養子に出されました。直が救った命が秀長のもとに帰ってきたという鍋丸の物語が、この先どこへ向かうのか、仙丸の歩んだ道と重ねながら見守りたいところです。

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