足利義昭のその後|『豊臣兄弟!』で尾上右近が演じる最後の将軍は、追放から15年後に京へ戻り秀吉の話し相手になった ─ 鞆幕府、養子話の真偽、将軍職を辞した日

鞆の浦の館から夕暮れの瀬戸内海を眺める足利義昭のイメージイラスト

11月1日放送の『豊臣兄弟!』第42回「北野大茶湯」で、尾上右近が演じる足利義昭が25話ぶりに再登場します。第10回「信長上洛」で従者に化けて岐阜に現れ、第11回の本圀寺では自ら兵を鼓舞した、あの義昭ですが、信長に京を追われてから秀吉の天下になるまでの十数年、どこで何をしていたのでしょうか。ここでは追放後の義昭の歩みと、秀吉との関係、そして将軍職を手放すまでを、放送前にまとめておきます。

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信長に京を追われたあと、義昭はどこへ行ったのか

天正元年(1573)、義昭は信長に対して兵を挙げましたが、立てこもった宇治の槇島城を攻められて降伏し、京から追放されます。一般にはこの年をもって室町幕府の滅亡とされていますが、義昭は征夷大将軍の職を解かれたわけではなく、河内の若江城、堺、紀伊の由良へと移りながら、将軍として各地の大名に信長打倒を呼びかけ続けました。

備後・鞆の浦の「鞆幕府」

天正4年(1576)、義昭は毛利氏を頼って備後の鞆(いまの広島県福山市)に移り、ここに御所を構えます。周りには奉公衆や奉行衆といった幕府の家臣だけでなく、芸能の者や医師まで付き従い、関係者は数百人にのぼったとも推定されていて、この時期を「鞆幕府」と呼ぶ研究者もいます。毛利氏が信長と戦ったのも、将軍を擁しているという大義名分があったからで、義昭はただの亡命者ではなく、反信長勢力の旗印であり続けたのです。

天正10年(1582)に本能寺の変で信長が倒れると、義昭は京へ戻る好機と見て動きますが、山崎で光秀を破り、賤ヶ岳で勝家を下した秀吉が天下を握っていくなかで、帰京はなかなか実現しませんでした。

秀吉は本当に義昭の養子になろうとしたのか

よく知られているのが、将軍になりたかった秀吉が義昭に「養子にしてほしい」と頼み、義昭がこれを断ったという話です。大河ドラマ『江』でも描かれた有名な場面ですが、この話のもとになっているのは江戸時代に林羅山がまとめた『豊臣秀吉譜』などで、当時の史料では確かめられていません。秀吉は将軍ではなく関白の道を選びましたが、それは義昭に断られたからというより、朝廷の最高位である関白に就き、将軍よりも上の立場から大名を従えようとした結果と見る説が有力です。

京へ戻ったのはいつか ─ 北野大茶湯のころ

流れが変わったのは天正15年(1587)の九州攻めです。九州へ向かう秀吉を義昭が備後で出迎えたと伝わり、島津氏の降伏にも義昭が働きかけたとされています。毛利氏も島津氏も秀吉に従ったいま、義昭を担ぐ大名はもういなかったのです。

九州平定のあと、義昭はおよそ15年ぶりに京へ戻ります。帰京の時期は天正15年の秋とする説と、翌年の聚楽第行幸のころとする説がありますが、いずれにしても北野大茶湯が開かれた天正15年10月前後のことで、第42回で義昭が再登場するのはこの史実に合わせたものと考えられます。そして天正16年(1588)正月、義昭は秀吉とともに参内して征夷大将軍の職を辞し、出家して昌山(しょうざん)と名乗りました。室町幕府が名実ともに終わったのは、実はこの時だったともいえます。

1万石の「元将軍」と秀吉の御伽衆

出家した義昭は、秀吉から山城の槇島に1万石を与えられたと伝わり、准三后という皇族に準じる待遇も受けました。かつて信長と戦って敗れた槇島の地をあてがわれたのは皮肉ですが、秀吉は義昭を元将軍として丁重に扱い、晩年の義昭は御伽衆として秀吉の話し相手を務めています。文禄の役では肥前名護屋にも出陣していて、名護屋城の周りの陣跡を示した図にも義昭の名が残っています。

慶長2年(1597)、義昭は大坂で亡くなりました。数えで61歳、秀吉が亡くなる前年のことです。信長と争い、毛利を頼り、最後は秀吉のもとで穏やかな晩年を送った義昭は、戦国の天下人三人の時代をすべて見届けた将軍でした。

『豊臣兄弟!』の義昭はどう描かれてきたか

『豊臣兄弟!』の義昭は、歴代大河のなかでも珍しく、機転がきき兵を鼓舞する頼もしい人物として描かれてきました。小一郎と藤吉郎を気に入り、自分の家臣にできないかと光秀に持ちかけたこともある義昭が、天下人となった秀吉とその弟・秀長を前に何を語るのか、第42回の見どころのひとつになりそうです。

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