虎御前山城跡(長浜市):小谷城を包囲するために築かれた陣城と、信長が通した道

虎御前山城/アクセス・場所・地図 浅井長政の小谷城攻めのために築かれ木下藤吉郎が城番した虎御前山城

虎御前山城(とらごぜんやまじょう)は、浅井氏の小谷城を攻めるために織田信長が築いた陣城です。小谷山と谷ひとつをはさんで向かい合う尾根に、信長の本陣と家臣たちの陣が並びました。城番をつとめたのは木下藤吉郎、のちの羽柴秀吉です。守るための城ではなく、攻めるための城でした。浅井氏が滅ぶと役目を終え、今は尾根づたいに陣跡の碑が残ります。

この記事のポイント
  • 小谷城を包囲するために築かれた、攻める側の城
  • 信長の本陣のほか、家臣団それぞれの陣が尾根に並んだ
  • 虎御前山と後方の砦を結ぶ軍用道路が築かれ、補給が確保された
  • 浅井氏の滅亡とともに廃され、今は陣跡の碑と眺望が残る

尾根の平場に立つ陣跡の碑

木立にかこまれた平場に、説明板と石柱が立つ。ここが陣のひとつで、まわりの平らな地面がその跡にあたる。

目次

攻めるために築かれた城

城というと守るものを思い浮かべますが、戦国の戦いでは、攻める側も城を築きました。敵の城の目の前に陣を構え、兵と兵糧を置き、そこから包囲を締めていく。こうした城を陣城と呼びます。虎御前山城はその代表的な例で、標高二百メートルほどの南北に延びる尾根に、曲輪と堀切が連なっていました。

尾根には信長の本陣のほか、柴田勝家、丹羽長秀といった家臣それぞれの陣が置かれました。今も陣跡を示す碑が点々と立ち、遊歩道でつながっています。石垣を積むような城ではありませんが、堀切と土塁は確かに刻まれており、短期の陣にしては手がこんでいます。

木立のあいだから見える平野

説明板の先、葉の落ちた木立のあいだから平野が見える。この見通しのよさが、陣を置く理由そのものだった。

道を築いて城を締める

▽ よく語られる話
小谷城は難攻不落の山城で、信長はこれを力攻めで落とした。
▼ 史実ではこうです
信長は正面から攻め登る方法をとりませんでした。目の前の虎御前山に城を築いて長期の包囲に入り、さらに後方の砦とのあいだに道を通します。『信長公記』によれば、この道は幅が三間を超え、両側に土の塀をめぐらせたもので、兵と兵糧が矢に狙われずに行き来できました。包囲は数年におよび、そのあいだに浅井方の支城や家臣は一つずつ切り崩されます。最後は越前からの朝倉の援軍を先に打ち破り、孤立させてから小谷城に取りかかりました。城を落としたのは攻城の勢いではなく、道と時間です。

この包囲を実際に回したのが木下藤吉郎でした。横山城の城番をつとめたのちに虎御前山へ移り、前線の維持を任されています。城を築き、道を通し、兵糧を運ぶ—のちに秀吉が得意とした戦い方の原型が、この山にあります。

小谷城が落ちたあと

天正元年(一五七三)、小谷城は落ち、浅井久政・長政の父子は自害しました。城にいたお市の方と三人の娘は城を出て助けられます。長政の嫡男は助命されませんでした。勝敗が決したあとの処置は、家ごとにきびしく分かれています。

浅井の旧領は秀吉に与えられました。秀吉は山城の小谷を捨て、琵琶湖ぞいの長浜に新しい城と町を築きます。山を下りて湖に面した城下をつくる—のちの城づくりの流れを先取りした選択でした。虎御前山城は、この時点で存在する理由を失い、廃されます。

山上から見わたす眺め

山上からの眺め。田と集落の先に山がせまり、その近さがそのまま対陣の距離だった。

陣城が教えてくれること

虎御前山城のような陣城は、記録に残りにくい城です。戦いが終われば捨てられ、建物は運び去られ、田や山林に戻ります。それでも堀切や平場は地面に刻まれ、何百年も残りました。城跡を歩いて地面の起伏を読むと、どこに兵を置き、どちらを向いて守っていたかが見えてきます。

もうひとつ、この城が伝えるのは、戦国の戦が土木工事と物流の勝負でもあったということです。道を通し、塀を築き、兵糧を運ぶ。華々しい合戦の場面の裏で、こうした仕事が積み重ねられていました。虎御前山に立つと、その地味な部分がそのまま地形になって残っているのがわかります。

虎御前山城跡の訪ね方

虎御前山は長浜市の北部にあり、山上まで車道が通じています。尾根づたいに遊歩道が整備され、陣跡の碑をたどりながら歩けます。高低差は小さく、散策の感覚でまわれる山です。冬から早春は木の葉が落ちて見通しがよく、地形の起伏がよくわかります。

向かいの小谷山に登ってから虎御前山に来ると、この城の意味がはっきりします。攻める側が何を見ていたのか、守る側から何が見えていたのか—二つの山を行き来すると、包囲戦の距離感が体でつかめます。横山城を加えれば、信長が北近江をどう押さえたかの線が引けます。

所在地:〒529-0103 滋賀県長浜市中野町

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