水ヶ江城跡(佐賀市):水路が堀だった龍造寺の城と、名と実がずれていった家

水ヶ江城/アクセス・場所・地図 九州の覇権を争った龍造寺隆信の居城 水ヶ江城

水ヶ江城(みずがえじょう)は、佐賀平野のただ中にあった平城です。龍造寺氏が代々の拠点とし、九州の覇権を争った龍造寺隆信もこの城で生まれました。山も石垣もない土地で、城を守ったのは網の目のように走る水路です。隆信の死後、鍋島直茂が佐賀城を築いたことで役目を終え、今は生誕を伝える石碑が残るのみとなっています。

この記事のポイント
  • 佐賀平野の水路を堀として使った、土と水の城
  • 龍造寺隆信が生まれ、一族が再興していく拠点となった
  • 隆信の戦死後も龍造寺家はすぐには絶えず、実権が段階的に鍋島へ移った
  • 佐賀城の築城にともなって廃城となった

城跡の近くを流れる水路

木々にはさまれて流れる水路。佐賀平野に網の目のように張りめぐらされたこの水が、城の堀の役目を果たしていた。

目次

水路のなかの城

佐賀平野は、有明海の干拓によって広がった土地です。高低差がほとんどなく、地面のすぐ下に水があります。この土地では、堀を掘るというより、もともとある水路を城のまわりに引き回す形になります。クリークと呼ばれる水路網が、そのまま防御線でした。

水ヶ江城も、はじめは館ほどの規模でした。龍造寺家兼が手を入れて城として整え、濠をめぐらせます。石垣も天守もない、平らな土地の城です。攻める側から見れば、高い壁はないかわりに、どこから近づいても水に行く手をはばまれる。佐賀の城の守りは、この水にありました。

龍造寺氏の再興

龍造寺氏は、もともと少弐氏に仕える国人でした。戦国期に入って周防の大内氏が北九州へ進出すると、九州北部の勢力図は激しく動きます。龍造寺氏も一度は当主を失い、一族が離散しかけました。これを立て直したのが龍造寺家兼で、老齢の身で家を再興し、曽孫にあたる隆信を後継に立てたと伝えられます。

隆信ははじめ僧籍にありましたが、還俗して家を継ぎました。以後、肥前を平定し、筑後・筑前へと勢力を広げ、大友・島津と並ぶ九州三強の一角と呼ばれるまでになります。その出発点が、この水ヶ江城でした。

沖田畷での敗死

天正十二年(一五八四)、隆信は島原半島へ出兵しました。離反した有馬氏を討つためです。有馬氏は島津氏に援軍を求め、島津家久の軍が島原へ渡ります。沖田畷と呼ばれる湿地帯で両軍はぶつかりました。

畷とは、湿地のなかを通る細い道のことです。大軍が展開できない地形で、龍造寺軍は隊列が伸びきったところを突かれました。隆信は討たれ、龍造寺軍は総崩れになります。数で勝る側が地形で敗れた戦いとして知られています。島原の地形を知る有馬・島津方の選んだ戦場でした。

龍造寺から鍋島へ

▽ よく語られる話
隆信が討たれて龍造寺氏は滅び、家臣だった鍋島氏が家を乗っ取った。
▼ 史実ではこうです
龍造寺家はすぐには絶えていません。隆信の子・政家が跡を継ぎ、その子の代まで当主は龍造寺でした。ただし実際の政務は、隆信の義弟にあたる鍋島直茂が担います。豊臣秀吉も、九州平定ののちに直茂へ実務をゆだねる指示を出しました。つまり名跡は龍造寺、実権は鍋島という状態が続き、江戸のはじめに鍋島が正式な藩主となります。一夜で乗っ取ったのではなく、数十年かけて名と実がずれていった過程です。この経緯が、のちに化け猫の伝説として語られるもとにもなりました。

城跡に立つ大きな石碑

広場の奥に据えられた自然石の碑。龍造寺隆信の生誕地であることを伝えており、まわりは住宅地になっている。

佐賀城の築城と廃城

直茂は、水ヶ江城の改修を計画したのち、新たに佐賀城を築きました。水ヶ江の城と、隣接する村中城をあわせて一つの城に作り変えるような規模です。これにより水ヶ江城は廃城となり、佐賀の中心は新しい城と城下町へ移りました。

佐賀藩は、のちに小城や蓮池に支藩を置き、一族で領内を固めます。龍造寺の名は家老の家などに残り、鍋島の名が藩主として続きました。

水ヶ江城跡の訪ね方

城跡はJR佐賀駅から車で十分ほどの中の館町にあります。東館跡が公園となり、隆信の生誕を伝える石碑が立っています。遺構はほとんど残っていませんが、周囲の水路をたどると、城がどのように水に守られていたかが想像できます。

佐賀の城をめぐるなら、佐賀城跡の鯱の門、蓮池城、小城城とあわせて歩くと、龍造寺から鍋島へ移った時代の形が見えてきます。

所在地:〒840-0022 佐賀県佐賀市中の館町7-15

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