池内蔵太家族 宛

池内蔵太 宛
原文

池御一同杉御一同先日大坂ニい申候時ハ、誠に久しぶりにかぜ引もふし薬六ふく計ものみたれバ、ゆへなくなをり申候。夫が京に参り居候所、又々昨夜よりねつありて今夜ねられ不申、ふとあとさきおもいめぐらし候うち、私し出足のせつは皆々様ニも誠に御きづかいかけ候計と存じ、此ごろハ杉やのをばあさんハどのよふニなされてをるらふとも思ひ定而、池のをなんハいもばたけをいのししがほりかへしたよふな、あとも先もなき議論を、あねなどとこふじより、あせたしいうさるほねおりばなし、よめもともどもつバのみこみ、きくみ〃たらずとふたつのみ〃ほぜくりあけてぞ、きかるべしなん。

ある老人論じていう、女というものハ人にもよるけれど、高のしれたをんなめ、かの坂本のをとめとやら、わるたくみをしそふなやつ、あまり々たらわぬちゑでいらざる事までろんじよると、すこしでもものしる人になれなれしくしたく、そふするうちになにとなく女の別もただしからぬよふニなりやすいものじゃ。なにぞききたくなると、男の方へたずねありくよふになり、かふいうとそのやミタ、思ひあたる人があるろふ。かの女れつじよでんなど見ると、誠に男女の別というものハたゞしい。

男の心ニハ女よりハべして女がこひしい事もあるが、あの年わかい蔵太の玉のよふなるをよめごを、なにぞふるきわらぢのよふ思ひきりて、他国へでるも天下の為と思へバこそ、議理となさけハ引にひかれず、又々こんども海軍の修行、海軍のというハおふけなおふねをのりまはし、砲をうつたり、人きりたり、それハ々おそろしい義理というものあれバこそ、ひとりのをやをうちにをき、玉のよふなる妻ふりすて、ひきのよふなるあかごのできたに、夫さへ見ずとおけいとハ、いさましかりける次第なり、かしこ。正月廿日龍杉御一同池御一同あねにも御見せ。

現代文

池ご家族一同杉ご家族一同先日大阪にいた時は、本当に久しぶりに風邪をひき、薬を6袋くらいも飲んでやっとこさ治りました。そうそう京都に行ったときに、昨夜からまたまた熱が出たので今夜はなんだか眠れない。ふと後先を思いめぐらしているうちに、私が出奔する際は皆さまにも本当にご心配をかけましたね。今頃は杉のおばさんはどうしているかな。池のおばさんは芋畑で猪が掘り返したような、後先もなく意味のない骨折り話を姉などと話してるのかな。お嫁さん共々、唾を飲み込み、聞く耳もたずとも二つある耳をよ~くほじくって聞いて下さいね。ある老人がこう言っていた、女というものは人にもよるけれど、言うまでもなくたかがしれたものだ。

そして、あの坂本乙女とやらは悪いことをしそうな奴だ、あまり頭も良くなく言わなくてもいいような話まで話している、と。少しでも知識のある人と親しくしなさい。そうするうちに、なんとなく女でも新しい考え方が生まれてくるもんじゃ。何かを聞きたくなると、男のほうへ訪ね歩くようになるのです。こうなるとそれみたことか、思い当たる人がいるでしょう。(※多分知識がある人とは自分の事(笑)自分の姉の乙女も自分が世の中の動向を色々と教えるうちに物事を広い視野で多角的に見れるようになったと・・)あの列女伝などを見ると、本当に男女の違いというものを正しく書いてある。男の心は女とは別で、女が恋しいこともあるにはある。が、あの年若い内蔵太のかわいいお嫁さんを草鞋(わらじ)のように扱い、思い切って国を出るのも天下の為と思えばこそです。義理と情けは引くに引けないものです。また内蔵太は最近も海軍の訓練をしています。

海軍というのは大きな船を乗り回し、大砲を打ったり、人を斬ったり、それそれは恐ろしいものです。義理というものがあればこそ、自分の親を家に残し、かわいい妻を振り捨て、姫のような子供も出来たのに、それさえ見届けず、実に勇ましいことです。正月20日龍馬より池ご家族一同杉ご家族一同姉(乙女姉さん)にも見せて下さいね

坂本龍馬の手紙139通(現代翻訳文)一覧

坂本八平(父)宛(最古の手紙)
相良屋源之助 宛
坂本乙女 宛
住谷寅之助・大胡聿蔵 宛
清井権二郎 宛
平井かほ 宛(龍馬初恋の人への手紙)
田中良助 宛(借金借用の手紙)
坂本乙女 宛(脱藩後初の手紙)
坂本乙女 宛(エヘンの手紙その一)
内蔵太の母 宛
坂本乙女 宛(日本の洗濯)
村田巳三郎宛
坂本乙女 宛(姉乙女に千葉佐那を紹介)
川原塚茂太郎 宛(坂本家の養子縁組依頼)
坂本乙女・春猪 宛(天誅組の蜂起失敗をあわれむ)
坂本乙女 宛
勝海舟 宛(黒龍丸のこと)
渋谷彦介 宛
池内蔵太宛
坂本乙女 宛
坂本権平・乙女・おやべ(春猪) 宛(桂小五郎なるものあり)
乙女・おやべ(春猪) 宛
池内蔵太家族 宛
坂本乙女 宛
坂本乙女 宛
池内蔵太 宛
印藤聿 宛
印藤聿 宛
岩下佐次右衛門・吉井友実 宛
印藤聿 宛
池内蔵太家族 宛
印藤聿 宛
木戸孝允 宛
木戸孝允 宛
高松太郎 宛
幕府要人 宛
佐井虎次郎 宛
お龍 宛
品川省吾 宛
坂本乙女 宛
桂小五郎 宛
桂小五郎 宛
三吉慎蔵 宛
森玄道・伊藤助太夫 宛
森玄道・伊藤助太夫 宛
三吉慎蔵 宛
渡辺昇 宛
吉井友実 宛
坂本春猪 宛
溝渕広之丞 宛
溝渕広之丞 宛
寺田屋お登勢 宛
坂本権平・一同 宛
坂本権平 宛
坂本乙女 宛
桂小五郎 宛
伊藤助太夫 宛
桂小五郎 宛
久保松太郎 宛
伊藤助太夫 宛
春猪(姪) 宛
坂本乙女(姉) 宛
お登勢 宛
お登勢 宛
桂小五郎 宛
河田佐久馬 宛
三吉慎蔵 宛
伊藤助太夫 宛
三吉慎蔵 宛
伊藤助太夫 宛
印藤聿 宛
三吉慎蔵 宛
坂本春猪(姪) 宛
三吉慎蔵 宛
伊藤助大夫 宛
坂本乙女(姉) 宛
坂本乙女(姉) 宛
お登勢 宛
菅野覚兵衛・高松太郎 宛
三吉慎蔵 宛
伊藤助太夫 宛
伊藤助太夫 宛
三吉慎蔵 宛
長岡謙吉 宛
寺田屋伊助 宛
三吉慎蔵 宛
伊藤助太夫 宛
高柳楠之助 宛
高柳楠之助 宛
お龍(妻) 宛
伊藤助太夫 宛
伊藤助太夫 宛
伊藤助太夫 宛
小谷耕蔵・渡辺剛八 宛
伊藤助太夫 宛
桂小五郎 宛
乙女・おやべ(姉 姪) 宛
坂本権平(兄) 宛
望月清平 宛
高松太郎(甥) 宛
お登勢 宛
長岡謙吉 宛
坂本権平(兄) 宛
三吉慎蔵 宛
陸奥宗光 宛
岡内俊太郎 宛
岡内俊太郎 宛
岡内俊太郎 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
安岡金馬 宛
佐佐木高行 宛
佐佐木高行 宛
長崎奉行 宛
陸奥宗光 宛
佐佐木高行 宛
桂小五郎 宛
渡辺弥久馬 宛
本山只一郎 宛
坂本権平(兄) 宛
後藤象二郎 宛
後藤象二郎 宛
後藤象二郎 宛
望月清平 宛
陸奥宗光 宛
岡本健三郎 宛
陸奥宗光 宛
林謙三 宛
順助(高松太郎変名) 宛
林謙三 宛
陸奥宗光 宛
坂本清次郎(坂本家養子) 宛

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