後藤象二郎 宛 坂本龍馬の手紙 原書と現代文翻訳

後藤象二郎 宛

原文

御相談被遣候建白之儀、万一行ハれざれば固より必死の御覚悟故、御下城無之時は、海援隊一手を以て大樹参内の道路ニ待受、社稷の為、不戴天の讐を報じ、事の成否ニ論なく、先生ニ地下ニ御面会仕候。〇草案中ニ一切政刑を挙て朝廷ニ帰還し云々、此一句他日幕府よりの謝表中ニ万一遺漏有之歟、或ハ此一句之前後を交錯し、政刑を帰還するの実行を阻障せしむるか、従来上件ハ鎌倉已来武門ニ帰せる大権を解かしむる之重事なれバ、幕府に於てハいかにも難断の儀なり。

是故に営中の儀論の目的唯此一疑已耳あり。万一先生一身失策の為に天下の大機会を失せバ、其罪天地ニ容るべからず。果して然らバ小弟亦薩長二藩の督責を免れず。豈徒ニ天地の間に立べけんや。誠恐誠懼十月十三日龍馬後藤先生左右

現代文

ご相談の建白の件ですが、万一行わなければ元より必死の覚悟です。下城(二条城)されない時は、海援隊の一手をもって大樹(将軍)参内の道路で待ち受け社稷(国家)のため仇を報じます。ことの成否は関係なく、先生(後藤象二郎)とはあの世でお会いします。○草案中の一切の政権を朝廷にお返しする云々この一句は他日幕府から出る謝表の中から万一遺漏があるか、あるいはこの一句の前後を交錯し政権の返上を実行しないかもしれない。

この件は、鎌倉幕府以来の武門を朝廷に返上することで、とても重要なので幕府においてもいかにも難しい決断である。これゆえ、営中(朝廷内)の会議の目的はただこの一義のみにあり。万一先生(後藤象二郎)の一身上の失策で天下の機会を失えば、この罪、天地に入れられるものではない。はたして、私はこの薩長の2藩から厳しく責め立てられること逃れられず。兄(後藤象二郎)いたずらに天地の間に立つべきではありません。まことに恐縮です。10月13日龍馬後籐先生(後藤象二郎)

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