城跡の案内板には、曲輪、虎口、馬出、土塁、堀切といった言葉が並びます。どれも「敵をどこで止めるか」を考えた工夫の名前です。この記事では、天守の残らない土の城でも歩くのが楽しくなるように、基本の用語をイラストでまとめました。この絵は、当時の様子を説明するためのイメージ(イラスト)です。
- 曲輪は城のなかの区画。中心ほど重要で、本丸・二の丸・三の丸と呼び分ける
- 堀は掘り下げ、その土を内側に盛り上げたのが土塁。ひとつの工事で高低差を二重に作る
- 虎口は出入口。まっすぐ入れないように折り曲げ、横から攻撃できるようにした
- 馬出は門の外に置く小さな区画。守りを固めつつ、こちらから出撃もできる
- 山城では堀切・竪堀・切岸が主役。石垣がなくても守りの形は読み取れる
曲輪(くるわ)── 城は区画の集まり

曲輪の配置。堀や土塁で区切った区画を重ね、中心の本丸を守ります
城を歩くとき、まず意識したいのが曲輪です。堀や土塁、石垣で区切られた平らな区画のことで、中心に近いほど重要な場所になります。中心が本丸、その外が二の丸、三の丸です。斜面に沿って細長く設けた腰曲輪、尾根を削った帯曲輪など、地形に合わせた呼び名もあります。
区画を重ねるのは、一か所が破られても次で止めるためです。彦根城や松本城のように石垣と堀で囲む城も、林城のような山の城も、考え方は同じです。
堀と土塁 ── 掘った土を積み上げる

堀と土塁の断面。掘り下げた土を内側へ盛り、高低差を二重に使います
堀は、城の外周を掘り下げたものです。水を張れば水堀、空のままなら空堀と呼びます。そして掘り出した土を内側に盛ったのが土塁です。ひとつの工事で「下げる」と「上げる」を同時に行うので、少ない手間で大きな高低差が作れます。堀の底から土塁の上まで十メートル近い城も珍しくありません。
堀と土塁のあいだに残した細い平場は犬走りと呼ばれます。土塁の崩れを防ぎ、見回りの道にもなりました。土を主役にした守りが極まった例が山中城の障子堀と畝堀で、堀の底に土の仕切りを残して敵の動きを止めています。土気城のように、台地を大きく断ち切った堀が残る城もあります。
虎口(こぐち)── わざと曲げた出入口
虎口は、曲輪の出入口のことです。城でいちばん弱いのは門なので、まっすぐ入れないように工夫されました。通路を直角に折る喰違い虎口、門と門のあいだに四角い空間を設けて三方から攻撃できるようにした枡形虎口などがあります。攻め手は向きを変えるたびに足が止まり、その間に上や横から矢と鉄砲を浴びることになります。
玄蕃尾城は土だけで枡形を作った城として知られ、金山城では石で固めた虎口が復元されています。城跡で道が不自然に折れていたら、そこはたいてい虎口の跡です。
馬出(うまだし)── 門の前に置く小さな区画

馬出のしくみ。門の前に区画を設け、敵の直進を防ぎます
馬出は、虎口の外側に張り出して設けた小さな区画です。敵は門へまっすぐ進めず、馬出のまわりを回り込むしかありません。守る側にとっては、兵を集めて外へ打って出るための足場にもなります。四角いものを角馬出、半円形のものを丸馬出と呼び、角馬出は北条氏や武田氏の城でよく見られます。
篠山城には三つの馬出が設けられ、そのうち東馬出と南馬出がいまも残っています。
山城で覚えたい三つ ── 堀切・竪堀・切岸
山の城では、堀と土塁のかわりに地形そのものを加工します。尾根を断ち切るように掘ったのが堀切で、尾根づたいに攻めてくる敵を止めます。斜面を縦に掘り下げたのが竪堀で、横移動を封じます。斜面を削って人工の崖にしたものが切岸です。
要害山城や明智城、児山城のように、石垣をほとんど持たない城でも、これらの跡を追えば守りの設計が読み取れます。堀切を渡る細い土の道は土橋で、わざと狭くして一度に渡れる人数を減らしていました。
現地で見るときのコツ
城跡に着いたら、まず「どこが平らか」を探します。平らな場所が曲輪です。次に、その縁を一周してみると、堀や切岸の落ち込みが分かります。最後に出入口を探し、道がどう折れているかを見ると、虎口や馬出の跡が浮かび上がります。この順番で歩くと、案内板の図と目の前の地形がつながります。
上田城や小諸城のように、城下町より低い場所に築いた城や、川と崖を味方につけた城もあります。用語を覚えると、なぜその場所に城が建ったのかまで見えてきます。
まとめ
曲輪で区切り、堀と土塁で高低差を作り、虎口で足を止め、馬出で外に備える。城の造りは、この四つの組み合わせでほとんど説明できます。天守が残っていなくても、土の形を読めば城は十分に面白い場所です。城跡を歩くときの手引きとして使ってください。
