飛騨松倉城跡(高山市):山上に積まれた石垣と、公家の名を継いだ三木氏

飛騨松倉城/アクセス・場所・地図 飛騨一国を統一した姉小路頼綱の居城 松倉城

飛騨松倉城(ひだまつくらじょう)は、高山の南にそびえる松倉山に築かれた山城です。飛騨一国をまとめた姉小路頼綱が本拠としました。標高八百メートルを超える山上に石垣が積まれ、曲輪が段をなして並びます。豊臣秀吉の命を受けた金森長近の攻撃で落城し、姉小路家は滅びました。石垣と空堀がよく残り、飛騨では屈指の見ごたえのある城跡です。

この記事のポイント
  • 標高八百メートルを超える山上に石垣を積んだ、飛騨最大級の山城
  • 「姉小路」は公家の名跡で、これを継いだのは在地の武士・三木氏だった
  • 桜洞城から本拠を移し、飛騨統一の拠点となった
  • 金森長近の飛騨攻めで落城し、高山城の築城によって役目を終えた

山上に残る高い石垣

山中に残る石垣。大きさのそろわない石を積み上げ、角を折って面をつくっている。標高八百メートルを超える場所での普請。

目次

山の上に石を積む

松倉城は、高山の市街地から見上げる位置にあります。麓との高低差は三百メートルほど。山上には本丸を中心に曲輪が並び、そのきわを石垣が固めています。飛騨の山城の多くが土づくりであることを思うと、これだけの石垣を山の上に積んだのは異例です。

石は近くの山から切り出されたものですが、それでも運び上げる労力は相当なものだったはずです。城を堅くするだけなら、土を削って堀を掘れば足ります。石を積むのは、守りのためだけではありません。ここに力のある者がいると見せるための普請でもありました。

曲輪の平場と斜面

木立にかこまれた曲輪の平場。左手の斜面は急に落ちこみ、削り出された切岸であることがわかる。

「姉小路」という名

▽ よく語られる話
飛騨を統一した姉小路頼綱は、代々の飛騨国司の家に生まれた当主だった。
▼ 史実ではこうです
姉小路氏はもともと京の公家で、飛騨国司の家柄です。この名跡を戦国期に手に入れたのは、飛騨南部に根を張った在地の武士・三木氏でした。三木良頼とその子・自綱が朝廷や幕府に働きかけ、姉小路の名を継ぐことを認められます。姉小路頼綱と呼ばれるのは、この三木自綱その人です。実力で領地を広げた武士が、公家の名を身にまとって支配の正統性を整える—戦国期にはよく見られる動きで、飛騨ではそれが特にはっきり現れました。近くの江馬氏が国衆のままだったのと比べると、三木氏の選んだ道の違いがよくわかります。

三木氏はもともと桜洞城を本拠としていました。飛騨南部の低い土地にある城で、冬は雪が浅く暮らしやすい場所です。しかし飛騨全体を治めるには、高山盆地を押さえる必要がありました。天正七年(一五七九)、頼綱は松倉山に新しい城を築き、本拠を移します。

飛騨統一と、その終わり

頼綱は、飛騨北部の江馬氏を八日町の戦いで破り、飛騨一国をほぼ手中に収めました。ただし、その過程で一族のなかにも争いがあり、身内を討ったとも伝えられます。統一の内実は、決して穏やかなものではありませんでした。

そして天正十三年(一五八五)、豊臣秀吉が越中の佐々成政を攻めたとき、頼綱は成政と手を結ぶ姿勢を見せます。秀吉は越前大野城主の金森長近に飛騨攻めを命じました。長近の軍は飛騨へ入り、松倉城を攻めます。難所に築かれた城でしたが持ちこたえられず、落城しました。姉小路家はここで滅びます。

城跡への道標

「松倉城跡 約250m」と記された道標。岩肌に沿って登る道の途中に立ち、山上の城跡へ導く。

高山城へ、そして山の城の終わり

飛騨を与えられた金森長近は、松倉城を使いませんでした。高山盆地の低い丘に高山城を築き、麓に城下町を開きます。山の上の城から、町とセットの城へ。同じころ各地で起きた移り変わりが、飛騨でも起きました。

松倉城は廃され、以後は手を入れられないまま山に残されました。石垣が崩れながらも形を保っているのは、その後に造り替えられなかったからです。近世の城に建て替えられた城跡では、戦国期の姿はたいてい失われています。

飛騨松倉城跡の訪ね方

登り口は高山市街の南、松倉山の麓にあります。中腹まで車道が通じており、そこから二十分ほど歩けば山上に着きます。本丸跡からは高山の町と、北アルプスの山並みが見わたせます。石垣のきわは急に落ちこんでいる場所があるので、足もとに注意が要ります。

飛騨の城をめぐるなら、桜洞城、高山城、神岡城と結ぶのが順路です。三木氏が低地の城から山上の城へ移り、金森氏がふたたび低地の城へ下りる—四つの城跡を歩くと、その流れがそのまま地形として読み取れます。

所在地:〒506-0034 岐阜県高山市松倉町(松倉山)

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