片岡鶴太郎が演じた歴史上の人物・時代劇の役まとめ:大河八作で北条高時から摂津晴門、鳥山石燕、そして狩野永徳へ

金箔を押した大襖に絵師と弟子たちが分担して描く工房のイメージイラスト

片岡鶴太郎さんにとって、『豊臣兄弟!』の狩野永徳は八作目の大河ドラマです。そして驚くことに、八作すべてで実在の歴史上の人物を演じています。鎌倉幕府最後の執権、毛利家の家老、公家、室町幕府の官僚、そして絵師。しかもこの絵師役は、前作『べらぼう』の鳥山石燕に続いて二年連続です。本人が画家であり書家でもあることを思うと、偶然とは思えなくなってきます。

目次

片岡鶴太郎さんが演じてきた、歴史の人びと

お笑いから俳優へ、という経歴はよく知られています。転機は一九八八年の映画『異人たちとの夏』でした。江戸弁を買われて主人公の父親役に起用され、第十二回日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞を受賞します。そこから俳優としての道が開けました。

画家としての活動は一九九五年の初個展から。書でも産経国際書展の産経新聞社賞や手島右卿賞を受けています。インド政府公認のヨガ検定に合格してヨガマスターの称号を持つことでも知られます。

今回の狩野永徳という役は、そうした多面的な人の、絵師としての顔がいちばん近い役かもしれません。

金地の大襖を寝かせ、絵師と弟子が分担して描く工房のイメージイラスト

狩野永徳の工房のイメージ。片岡鶴太郎さんにとって、絵師を演じるのはこれが四度目になります(イメージイラスト)

大河ドラマは八作目 ── 全部が実在の人物だった

作品 放送 役 どんな人物か
太平記 一九九一年 北条高時 鎌倉幕府十四代執権。在職中に幕府が滅んだ最後の執権
毛利元就 一九九七年 井上元兼 毛利家の家老。経済を握ったが、一族もろとも粛清された
元禄繚乱 一九九九年 英一蝶 元禄の江戸で人気を博した絵師
篤姫 二〇〇八年 岩倉具視 王政復古を動かした公家。維新の元勲
軍師官兵衛 二〇一四年 小寺政職 播磨の領主。黒田官兵衛の主君
麒麟がくる 二〇二〇年 摂津晴門 室町幕府の政所頭人。幕府の実務を統括した官僚
べらぼう 二〇二五年 鳥山石燕 江戸中期の絵師。妖怪画の大家で、喜多川歌麿の師
豊臣兄弟! 今回 狩野永徳 信長と秀吉の城を描いた絵師

鎌倉、戦国、元禄、幕末、室町、江戸中期。時代がばらばらなのに、どれも実在の人物です。創作の役で埋めていないところに、この俳優の立ち位置が出ています。

なお同じ型で、伊藤健太郎さんが演じた歴史上の人物もまとめています。

鎌倉から幕末まで ── 前半の四役

北条高時は、鎌倉幕府が滅んだときの執権です。暗君として描かれることの多い人物で、『太平記』での演技は今も語り草になっています。

井上元兼は毛利家の家老でした。経済を握り、大内派として力を持ちすぎたために、元就によって一族ごと粛清されます。毛利秀元の記事で触れている毛利家の、その前の世代の話です。

英一蝶は元禄の江戸の絵師。『元禄繚乱』は忠臣蔵を軸にした作品でした。赤穂浪士の討ち入りの時代を、絵師の側から見ていたことになります。

岩倉具視は『篤姫』で。王政復古を動かした公家です。二条城で大政奉還が行われたあと、朝廷側で事を進めたのがこの人でした。

官兵衛の主君 ── 『軍師官兵衛』の小寺政職

播磨の領主・小寺政職は、黒田官兵衛が仕えた主君です。織田につくか毛利につくかで揺れ、結果として官兵衛を苦しめることになりました。

この役について、本人がこう語っています。

評定のシーンで、政職の「ここは思案のしどころじゃのう」というせりふがあるんですけど、これを状況によって言い方を変えています。同じせりふでも、心情によってせりふのトーンとか目つきで変わってくる

赤い鼻のメークについても、「一見おどけて見えますけど、裏に回って自分の気持ちを吐露するときの顔が怖くなる」と説明しています。同じ台詞を、言い方で変える。この役づくりの考え方は、のちの悪役にもつながっていきます。

官兵衛と同じ時代を生きた軍師については竹中半兵衛とはをどうぞ。

幕府のラスボス ── 『麒麟がくる』の摂津晴門

室町幕府の政所頭人、摂津晴門。足利義輝・義昭の時代に幕府の実務を握っていた官僚です。

チーフ演出の大原拓さんは、起用の理由を「コメディとシリアスを巧みに使い分けることができる」と語り、「悪いというのを前面に出しつつ、小芝居を含めていろんな表情・表現をしていただきたい」と要望したことを明かしています。

本人のコメントも振り切っていました。

光秀をどういじめていくか、どのような策略の中で光秀を動揺させるか……官僚的な頭の良さと、エリートのプライドで、光秀をこれからどんどん追い込んでいきます。憎たらしいキャラクターを演じたいと思います。悪役がいないと、ヒーローは輝きませんからね

放送後、「幕府のラスボス」としてSNSで話題になりました。本能寺の変へ向かう明智光秀を、幕府の側から追いつめる役どころです。

妖怪を描いた師 ── 『べらぼう』の鳥山石燕

前作『べらぼう』では鳥山石燕を演じました。江戸中期の絵師で、妖怪画の大家。喜多川歌麿の師にあたります。

本人のコメントが、この人らしいつながり方をしています。

鳥山石燕は妖怪絵師として独自の世界を切り拓き後進の歌麿を見出し、そして現代の妖怪漫画『ゲゲゲの鬼太郎』の作者・水木しげるさんへと繋がって行きます

絵師の系譜を、現代まで一本の線で見ている。狩野派はどうやって江戸幕府の御用絵師になったのかで書いたとおり、絵師の世界は師から弟子へ、家から家へと受け渡されていく世界です。

そして狩野永徳 ── 二年続けての絵師役

『豊臣兄弟!』では狩野永徳。信長の安土城、秀吉の聚楽第と大坂城の障壁画を手がけた、安土桃山でいちばん大きな絵師です。

本人はこう語っています。

狩野永徳という、歴史に名を残す偉大な絵師を演じる機会をいただき、大変光栄に思いました。絵師として永徳が生きた時代や、どのような思いで作品を生み出していたのかということに、とても興味を持ちました。単に「歴史上の有名な絵師」を演じるのではなく、一人の表現者として永徳を捉えたいと思っています

そして二年連続の絵師役について、「不思議なご縁を感じています」と。

永徳がどんな絵師だったのかは狩野永徳とはにまとめました。

大河のほかの時代劇と映画

▶ 出典が確かなもの
  • 写楽(一九九五年、篠田正浩監督)── 幾五郎、のちの十返舎一九。『東海道中膝栗毛』の戯作者
  • どら平太(二〇〇〇年、市川崑監督)── 安川半蔵。山本周五郎の原作による創作の人物。この作品で第二十四回日本アカデミー賞の優秀助演男優賞。興行収入十四億円
  • 海辺の映画館 ── キネマの玉手箱(二〇二〇年、大林宣彦監督の遺作)── 千利休。キネマ旬報ベスト・テン日本映画第二位、芸術選奨文部科学大臣賞

テレビの時代劇では、年末時代劇スペシャル『奇兵隊』の村田蔵六(大村益次郎)、NHK正月時代劇『大友宗麟』や『徳川家康と三人の女』での豊臣秀吉、『白虎隊』の板垣退助、『オトコマエ!』の鳥居耀蔵、『坂の上の雲』の八代六郎などが知られます。ただしこれらは出演歴データベースによるもので、放送局や年の表記にゆらぎがあります。

千利休の弟子たちの記事も、あわせてどうぞ。

絵師の役が四本 ── 画家でもある俳優

整理すると、こうなります。

英一蝶(元禄繚乱)→ 十返舎一九(写楽)→ 鳥山石燕(べらぼう)→ 狩野永徳(豊臣兄弟!)。

十返舎一九は戯作者なので厳密には絵師ではありませんが、絵も描いた人です。つまり「筆で食べていた人」の役が四本ある。そして演じている本人が、個展を開く画家であり、書展で賞を受けている書家でもあります。

役者が自分の持ち物を役に持ち込めるとき、演技は強くなります。「単に歴史上の有名な絵師を演じるのではなく、一人の表現者として」というコメントは、そういう場所から出てきた言葉に見えます。

才蔵という筆屋が同じ回に出てくるのも、考えてみれば面白い巡り合わせです。筆を作る人と、筆を使う人が、同じ大和郡山編に並んでいます。

▷ 大河ドラマではこう描かれています
狩野永徳を演じるのは片岡鶴太郎さん。NHKの発表では狩野派の絵師という役どころで、第三十七回「秀長の国」・第三十八回「和を以て、大和をなす」に登場する人物として、筆屋の才蔵(間宮祥太朗さん)、庄屋の石川清兵衛(伊藤健太郎さん)、興福寺一乗院の坊官・磐覚(坂口涼太郎さん)とともに紹介されました。

まとめ

片岡鶴太郎さんの大河は八作目。北条高時、井上元兼、英一蝶、岩倉具視、小寺政職、摂津晴門、鳥山石燕、そして狩野永徳。全部が実在の人物です。

鎌倉の執権から室町の官僚、戦国の領主、元禄と江戸中期の絵師、幕末の公家まで。これだけ時代をまたいで、しかも一度も創作の役で埋めていない俳優は、そう多くありません。

狩野永徳とは、狩野派はどうやって幕府の御用絵師になったのか、伊藤健太郎が演じた歴史上の人物もどうぞ。

※大河八作とその役名、映画の受賞・興行成績はNHKの発表および日本アカデミー賞・日本映画製作者連盟の公式発表によります。テレビ時代劇の一部は出演歴データベースによるもので、放送局や年の表記にゆらぎがあります。

  • URLをコピーしました!
目次